農コラム
COLUMN

脱サラ農家への道:お金の一歩
脱サラ農家が教える、農業の始め方
2023.01.23

4年前に脱サラし農業を始めた「脱サラ農家」としての経験から、これから農家を始める方の参考になればと思い、私が取り組んできた事を少しずつ書き残していこうと思います。 

今回は、なかなか表に見えにくい「お金」の事を赤裸々に(笑)話していこうと思います。 農家同士でもお金のことは話しにくいものですが、少しでも農業を目指す皆さんの心の準備になれば嬉しいです。

まずは貯えを!

新規就農を考えている方が、自治体や農業委員会などに相談に行くとすればまず聞かれるのが「どのくらいの貯金がありますか?」だと思います。 そして、一般的に言われているのが2-3年分の貯えがあるべしと。 もし、あなたの世帯が今の生活をするのに月に40万円の出費が必要とすれば、1000万~1500万円程の貯蓄が必要となるわけです。 実際に私自身が就農するときには、預金の他に株や保険での積み立てなどの資産を合わせれば、直ぐに現金化できる貯蓄として約3年は無収入でもやっていける状態で農業を始めました。 

では、実際に就農した実感としてどうだったか?   やはり、最低2年は無収入でも生活していけるだけの貯えがあるくらいが、精神的にも落ち着いて農業に打ち込めると思います!

農業は、畑の準備をして、播種をして、収穫して、販売して、やっと入金、、 というように、どうしても収入が立つまでに時間がかかります。 しかも1年目は、思うように収穫できないこともあるだろうし、想像していたように売上が立つかどうかも分からない。 そのようなリスクも考えて、生活費約2年分は就農する前に貯めておくことをオススメします。

新規就農では「農業次世代人材投資資金(旧青年青年就農給付金)」などを受けれらるのですが、制度変更により交付型だったものが無利子の融資型に変わってしまったことや、その資金は機械や設備への用途に限られていたりと、農業経営が安定するまでの生活費はやはり貯えを切り崩していくと考えておいてください。

雇用就農という考え方

とは言うものの、「2-3年分の貯えを作ってから就農などといっていたら、何時まで経っても会社を辞められません!」と言われてしまうかもしれません(笑) 貯えは少ないけど、どうしても農業を始めたい!という熱い想いの人はどうするか!? 

もちろん、田舎に引っ込んでほとんど自給自足のような生活で出費を減らしながら、思い描いた農業を地道にやる!という方法もあると思いますが、この方法は私の性格的には無理。 もう一つの方法として「雇用就農」は考えてみても良いと思います。 サラリーマンのような人に使われる仕事が嫌だから農業の世界に入りたいという方には、農業でも人に使われるというのは我慢ならずに選択肢に入らないのかもしれませんが、一定の収入を得ながら農業の知識も蓄積できるという点ではやってみる価値はあると思います。 但しこの場合は、あなたの目指す方向性について雇用主と就農前にしっかりと話し合い、あなたを応援してくれる雇用主を見つけ出すことが重要です! 1-2年間ただただ農作業に使われ、重要な事は何も教えてくれなかった、、ということでは、折角の就農への熱い想いが冷めてしまいますから。

年間の売上と経費を把握しよう

具体的なお金の話に戻ります。

前回の「脱サラ農家への道:最初の一歩」でも書きましたが、最初に全体を把握することが重要で、お金に関しても就農一年目で自分が作った作物の”売上”と”必要経費”を完全に把握するようにしましょう

日々に記録する経費は、「種苗関連」「肥料関連」「農薬関連」「諸材料関連」にざっくりと分けておくことをオススメします。 もちろん申告書類を作る時にはその他の全ての出費を仕分けすることになりますが、ここで述べているのは日々の農作業で使った経費をタイムリーにざっくりと把握するための項目です。 例えば、苗や種を購入したらその時に購入にいくらかかったか、或いは防除作業を行ったらどの農薬を何ml使ったかを記録しながら、それぞれの作業にどのくらいの経費を使ったかを日々確認する目的です。

私の場合は、下記のようにエクセル作業日誌に諸経費の記入項目の欄も作っておいて、農薬を撒いた時などは使用量も記入しながら、経費をざっくりと把握するようにしています。 これを1年間まとめることにより、その作物の年間の売上と一緒に、それぞれの経費の大小の感覚が掴めるようになります。

これについても、今はアプリなどで経費も紐づけられるものもあるので、それを使っても良いと思います。

決算書を作成するためには、売上やその他雑多な経費も全て仕分けするひつようがありますが、その時に気を付けておくことが「作物別に区別して売上と経費を仕分ける」こと!! これを怠ると作物別の利益率の確認が出来なくなり、利益率の悪い作物に長年労力を掛けるということになりかねません。(ただし、雑多な作物はまとめてしまっても良いと思います。 そこは仕分労力とその作物が経営に与える重要度で判断しましょう。 私自身も、細々と直売所で販売している作物に関しては作物毎ではなく「直売所作物」という項目で括ってしまっています)

各作物に共通にかかる経費はどうするか? 例えば、「事務通信費」などですね。 プリンターのインクがナスの為の印刷物に使われたのか、ネギのラベルの為かなどは分かりません。 私の場合は、共通部門の経費は、売上の比率で分配して各作物の収支に組み込んでいます

ここまで計算して、やっとその作物の生産原価を計算することが出来ます。 JA出荷や市場出荷ならば生産原価なんて気にする必要はないのですが、直販で自分の作物に価格を決めなければならない時は、この生産原価を把握しておかないと売れば売るだけ損をしているなんてこともあるので注意!!

ここで、参考に弊農園で栽培している主な作物の収支を記載しておきます。 

お米は1反で10,000円の利益しか出ていない、、(汗)。 ハウス栽培は、露地に比べて経費は掛かりますが、残るお金も大きいですね。(この収支表では、労働時間に対する経費は含まれていません。 ここに、労働時間としての経費(例えば、1000円/時間で計上)を入れてるところ収支として完成です。)

年末調整・決算書作成・確定申告を自分でやる

自営業になれば確定申告は必然的に皆さん自身でやることになりますが、これが慣れないと面倒な仕事。。 面倒なので、税理士さんを雇って(年間で10-20万くらいか)領収書の整理から書類作りまで頼んでしまう人もいますが、個人で自営業をやっているレベルならば、自分の成績表を付けるつもりで先ずは自分で作ることをオススメします。 自分で作ることで、経営全体のお金の構造を把握することができますし、会社員の頃は意識していなかった税金の大きさと仕組みを認識することもできます。 これって、経営の上では本当に大切な意識だとおもいます!

最後に、年間の総まとめとして決算書を見るときに重要な見方は、1年間で生み出したお金がプラスかマイナスかということ。 これは決算書上の最終的な純利益ではなく、お金の実際の出入りである「キャッシュフロー」で見るということです。 もちろん決算的に黒字ならば言うことなしですが、決算的に赤字でも、キャッシュフローがプラスであれば問題ありません。(簡単に言えば、「キャッシュフロー」とは、「売上-経費+減価償却費」です)  この数字をどんどんプラスにするようにしたいですね☆

この他、個人事業主では青色申告控除や専従者給与、農業者年金など、最終所得を低くする方法(税金を安くする方法)がありますので、そのあたりはまた別の機会に! 以上、少しでも農業を始めようとしている皆さんの参考になれば幸いです。